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吉右衛門が思いを語りました~国立劇場12月歌舞伎公演


  国立劇場12月歌舞伎公演は、『通し狂言 増補双級巴(ぞうほふたつどもえ)―石川五右衛門(いしかわごえもん)―』です。初代中村吉右衛門が手掛けた五右衛門物の傑作に、当代吉右衛門が挑む、待望の通し上演!
 10月16日、都内にて取材会が行われ、中村吉右衛門が公演に向けての思いを語りました

【中村吉右衛門】
 『増補双級巴』は、初代中村吉右衛門が何度も勤めた所縁ある作品で、なるべく初代の残した形を再現できればと思っております。今回50年ぶりの上演となる「五右衛門隠家の場」では、人間的な五右衛門が描かれています。年の暮れで、観ていらっしゃる方にはちょっと辛いような深刻な話でございますが、芸談のなかで初代もその場面に触れ「名人(四代目市川)小團次の形で演じる」と語っており、ここが播磨屋としては一番の眼目となるところでございます。
 島原に出ていた元遊女と石川五右衛門、共に実の親の顔を知らないという境遇の似た夫婦が、お互い思いやることで悲劇が起きてしまいます。これは実生活のなかでもあることで、みなさんも思い当たるのではないでしょうか。「ああ、そうだな」と思いながら涙していただけるように、共演者の方々と力を合わせ、喜び・悲しみを表した芝居にしたいなと、思っております。

 名人小團次は、すばらしい役者だったと思いますが、なにより、五代目尾上菊五郎と初代市川左團次という名優を育てたという人で、それも素晴らしい事だと思います。私も人を育てる立場になりましたが、なかなか難しいことです。私の養父、初代吉右衛門にも吉右衛門劇団というのがあり、戦後の名優と呼ばれる方々を大勢育てていて、どちらも素晴らしいなと感じています。
 今回は、宙乗りで“つづら抜け”もさせていただきます。また、90年ぶりに復活する「木屋町二階」の場は、『金門五山桐』の「南禅寺山門」のパロディーで、尾上菊之助くんが久吉を演じてくれます。“世話風の山門”という趣向で、お客様にも大いに喜んでいただけるのではないかと思っています。