坂東竹三郎さんご逝去
関西在住の数少ない幹部俳優であり、上方の芝居になくてはならない俳優であった、日本俳優協会会員・伝統歌舞伎保存会会員の歌舞伎俳優・坂東竹三郎(ばんどう・たけさぶろう、本名:岡崎正二=おかざき・まさじ)さんが、令和4年6月17日(金)午前11時28分、骨髄異形成症候群のため大阪市内の病院にてご逝去されました。享年89歳。ご葬儀・告別式は家族葬で執り行われました。
【略歴】
1932年8月4日生まれ。49年5月四代目尾上菊次郎の弟子となり、大阪・中座『盛綱陣屋』の腰元で尾上笹太郎を名のり初舞台。59年三代目坂東薪車(しんしゃ)と改名し名題昇進。67年3月菊次郎の名前養子となり、朝日座『吉野川』の久我之助(こがのすけ)ほかで五代目坂東竹三郎を襲名。78年上方舞の東山村流の二世家元となり山村太鶴を名のる。
情が深く滋味にじむ演技で、特に義太夫狂言の母親役などに本領を発揮。『すし屋』のお米、『引窓』のお幸、『勘平腹切』のおかやなど、家族を思って苦悩する老母役で見せる情愛と哀れさはもはや独壇場。2018(平成30)年度の大阪文化祭賞に輝いた『女殺油地獄』の母おさわは、与兵衛への愛情を複雑な家庭環境をにじませながら演じ、作品世界に大きな説得力をもたらした。一方、『封印切』のおえんをはじめとする上方の花車方は、色街特有の色香と情味を体現、舞台の味を一際濃くする。新作歌舞伎にも個性を発揮し、スーパー歌舞伎Ⅱ『ワンピース』の女医ベラドンナ、三谷かぶき『月光露針路日本(つきあかりめざすふるさと)』のロシア人女性ソフィア・イワーノヴナでは客席の喝采を浴びた。自主公演「坂東竹三郎の会」では『怪異 有馬猫』や『夏姿女團七』など珍しい芝居を上演し、観客を喜ばせた。最後の舞台は2021年12月南座『雁のたより』の仲居お君。
1994、95年、99年に十三夜会賞助演賞。98年十三夜会賞奨励賞。2000年大阪市民表彰。03年第二十四回松尾芸能賞優秀賞。07年第十三回日本俳優協会賞特別賞。09年文化庁長官表彰。18年7月大阪松竹座『女殺油地獄』の母おさわで18年度大阪文化祭賞。令和4年第43回松尾芸能賞功労賞。
謹んでご冥福をお祈りいたします。