忠臣蔵の四季

季節の物語で描かれる人物たちの復讐への道

視覚的・重層的に探る名作への旅
忠臣蔵は日本人の誰もが知っている、もっとも人気の高い作品である。元禄十四(一七〇一)年三月十四日、江戸城での浅野内匠頭による刃傷を切っ掛けに、浄瑠璃、歌舞伎、講談、映画、テレビドラマなど、手を変え品を変え数多くの物語として人口に膾炙してきた。
それら有象無象の忠臣蔵の基になっている『仮名手本忠臣蔵』は、春に始まり冬に終わる、四季の物語といえる。春は、塩冶判官(浅野内匠頭)の「刃傷」から「切腹」「城明渡し」まで、物語の発端である。冬は、大星由良之助(大石内蔵助)の出立から「討入」まで、物語の結末になる。その間、夏から秋にかけて早野勘平(萱野三平)女房お軽、寺岡平右衛門(寺坂吉右衛門)ら若者たちの苦衷が描かれた。
本書は歌舞伎研究の第一人者による、新たな忠臣蔵発見の旅を描いた一冊である。雪月花に托した、日本人の心象風景を辿る旅。忘れることのできないせりふや音、消えることのない姿や一瞬の動きの記憶を追い求める春夏秋冬の旅……。
名作の魅力を、あるようでなかった視点を切り口に、登場人物とともに探る魅力的な内容にあふれている。
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