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海老蔵が意気込みを語る~新橋演舞場「初春花形歌舞伎」


 平成26年1月新橋演舞場では「 初春花形歌舞伎」と銘打ち、『通し狂言 壽三升景清(ことほいでみますかげきよ)』が上演されます。(昼の部、夜の部同一演目)
 「歌舞伎十八番」のうち、平家の武将“悪七兵衛景清”を描いた、いわゆる「景清物」を、新たな構想でまとめ、1つの通し狂言として上演。市川海老蔵中村獅童中村芝雀市川左團次をはじめとした豪華な顔ぶれで、「歌舞伎十八番」ならではの華やかで壮大な舞台となります。公演に先立ち市川海老蔵が意気込みを語りました。

来年お正月、新橋演舞場の『壽三升景清』は、父團十郎に相談をし、構想を重ねてきた作品です。二世市川團十郎が勤めた『雷神不動北山櫻(なるかみふどうきたやまざくら)』という芝居から、後に歌舞伎十八番に制定される『毛抜』『鳴神』『不動』の3作品が独立したことにヒントをえて、『関羽』『鎌髭』『景清』『解脱』も景清の話として全てが繋がり一つの作品になるのではないか、いつかこうした通し狂言をやりたいという話を父ともさせていただいておりました。

景清は平家に生まれてしまったという性(さが)を持って生きたのだと思います。力を持ち、才能を持ち、全てを持っているのに、なぜ源氏ではなく平家に生まれてしまったのか。源氏に生まれていれば棟梁にもなり得たであろう人物の景清が、もし死ぬ間際に、走馬燈のように自分の人生を振り返ったならば、きっと現実の人生とは異なり、自分が夢に描いた人生になっていたのではないでしょうか。この作品では、景清の夢を全て叶えてあげたい。というように景清の無想の夢を絵巻物的な荒事として表現したいと考えています。

『暫』や『矢の根』の主人公は絶対正義であり、そのため隈取りは全て紅で描かれていますが、景清の頬には青い筋が入ります。それは、心の闇の現れではないでしょうか。現代だからこそ判っていただける景清の細かい心理描写をどう表現するか。力があるのに報われずに滅びていく、こうした人生は現代の社会というものに置き換えても充分理解できる、そういうところに景清を演じる魅力があると思います。
以前勘三郎のお兄さんに「地球投げをしろ」と言っていただいた事がありました。今回それに似たようなスケールの荒事の演出を考えていて、きっとお客様にも楽しんでいただけると思っています。そしてこの作品で生まれた『関羽』『鎌髭』『景清』『解脱』がそれぞれ独立し、多くの俳優の方々にも演じてもらえるような作品となることが大きな目標です。