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公文協「松竹大歌舞伎」製作発表で、尾上菊之助が公演への思いを語りました
夏の恒例、公文協主催の巡業公演「 東コース 松竹大歌舞伎」(6月30日~7月31日)が開催されます。今年は『近江のお兼』『曽我綉俠御所染 御所五郎蔵』『高坏』の3演目が上演されます。公演に先立ち都内で製作発表が行われ、尾上菊之助が公演に向けての思いを語りました。
【尾上菊之助】
50年の歴史を重ねてきた公文協の巡業公演。次の50年に向けての1年目、その役目の「東コース」を承りました。非常に光栄に思っております。今回の演目は、女方舞踊の『近江のお兼』、黙阿弥の世話物の代表的な『御所五郎蔵』、そして曽祖父六代目尾上菊五郎が創り、十七代目中村勘三郎のおじ様が復活してくださいました『高坏』を初役で勤めさせていただきます。歌舞伎にとりまして、代表的で華やかで分かりやすい演目が並んでおります。もちろん歌舞伎をご覧になったことのある方にも楽しめますし、地方で初めて歌舞伎をご覧になる方にも楽しんでいただける演目だと思います。是非、各会館の方にお越しいただければと思っております。
『御所五郎蔵』は五代目菊五郎が大事にしておりました演目です。以前に一度演じてみて、黙阿弥の七五調のセリフ、これがやはり言葉が洗練されていて、星影土右衛門と門弟、五郎蔵とその子分達との掛け合いの面白さというものを感じました。この演目のみどころは、歌舞伎を代表する“縁切りの場”や、逢州殺しの“だんまり”の立廻りですね。立廻りを“だんまり”で、下座の相方に乗せてやるというのも歌舞伎美の極まったところであると思います。そういう歌舞伎の代表的な場面、極まっている場面をどのように美しく見せるか、そして先輩達が築き上げてきてくださったものをしっかりと継承して、黙阿弥の魅力を伝えることができるかということを、難しさと同時に楽しみに感じてやらせていただききました。
『高坏』は六代目が創ったものが一度上演されなくなって、十七代目の勘三郎のおじ様が復活されて作曲し直して、それが今や歌舞伎の中でも人気演目となっております。当時流行っていたアメリカのタップダンスが六代目のアンテナに引っかかって、当時の宝塚(歌劇団)の方に歌詞を書いていただいて一緒に作った、日本舞踊の創作の中でもタップダンスを取り入れるというのは、自分の祖先でありながら凄い人だなと思います。タップダンスといいつつも、狂言の持つふんわりとした雰囲気ですとか、お酒を飲んで浮かれながらタップを踏んでいくところが難しくもあり、面白さでもあると思います。十七代目の勘三郎のおじ様、十八代目の勘三郎のお兄さん、そして現在に流れている『高坏』の流れに私も乗って、ほろ酔い加減でタップを踏めるようになれるまで稽古をしていきたいと思います。
巡業で気をつけているところは、巡業で行く先々の皆様に、どのようにしたら歌舞伎の魅力を伝えることができるかというところです。この会館であればどのくらいの勢いで声が届くのか、花道の使い方とか、照明等にしても、歌舞伎の魅力を120%伝えられるような公演にしたいと思いますので、そういうところに気を配っていきたいと思います。また巡業先の、その土地の空気に触れて、名物ですとかおいしいものを食べるのも巡業ならではの楽しみですね。インターネットでおいしい店探しをして、みんなで食べに行くのが楽しみです。まずは札幌で、ビールとジンギスカンですね(笑)。
五代目、六代目と創られてきたもの、熟成されてきたものを父が継承してきた音羽屋の芸、これをもっと貪欲にこれからも継承していきたいという思いが強いです。それと同時に、女方もやってきましたので、女方をやるにしても立役をやるにしても、一つひとつの役を役になりきって勤めていきたいと思っております。