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又五郎、歌昇、巳之助が意気込みを披露~6月歌舞伎鑑賞教室「連獅子」

 
 国立劇場 6月歌舞伎鑑賞教室の上演に先立ち記者会見が行われ、『連獅子』に出演する中村又五郎中村歌昇、「歌舞伎のみかた」の解説を勤める坂東巳之助が意気込みを披露しました。

【中村又五郎】
 10年振りの鑑賞教室です。国立劇場さんには毎年お世話になっておりますが、特にこの鑑賞教室は、昭和61年の『義経千本桜』で播磨屋(中村吉右衛門)のお兄さんの「四ノ切」で義経をやらせていただいたのが一番最初でした。そして回を重ねる毎に、この鑑賞教室で大きなお役を勉強させていただき、その後又五郎襲名の時に襲名狂言として上演させていただきましたものもあります。本当に勉強させていただいた公演であるということは間違いないと思います。
 『連獅子』は、伜の歌昇と一緒に又五郎襲名の公文協巡業で廻らせていただいた時に上演させていただきました。東京の大劇場での上演は今回が初めてでございます。今まで教えていただいた振りとか、基本に忠実に、心を引き締めて踊りたいと思います。鑑賞教室は学生さんが多いですので、親子の愛とかが表現できればなと思います。私は還暦を過ぎて随分経ちますので、体力を温存しながら、1日2回の公演で結構大変だと思いますが、一生懸命勤めさせていただきます。

 『連獅子』は子どもができたら一緒に踊りたい、そう思っておりましたが、実際に親子でやりますとまた違う感情が出てきまして・・・。実際に踊ってみると、やはりいろいろな事が「ああしたらいいのにな」とか、「こうじゃないかな」と言う方が大きくなっていったのが事実です。親子で踊らせていただくのは嬉しいことですけれど、その反面、親だからこそ見える、子どもにああしてほしい、こうしてほしいという部分も出てくるのが事実でした。
 松羽目というバックに何もない空間で演じると言うことは、見ている方に、景色・道具が浮かぶように勤めたいといつも思っております。特別な演出は考えておりません。私の考えですが、毛振りというのは最後の最後で、いかに綺麗に振れるかだと思います。若い時は勢いに任せて、どうだと言うぐらい。もうそんな年でもありませんので、それを踏まえながら踊らせていただけたらなと思います。

 歌舞伎で海外公演に行かせていただくと、本当に歌舞伎のことをよく御存じの方が多いのに驚かされます。初めてご覧になる歌舞伎のイメージを、どういう風にもっていただくか。外国人のための「ディスカバー歌舞伎」では、外国人の方だけでなく、初めて歌舞伎をご覧になる方に興味をもっていただけたら良いと思います。



【中村歌昇】
 『連獅子』は大好きな作品で、子どもながらにずっと憧れていた作品の一つです。それを襲名の時の巡業で勤めさせていただきました。その経験をしっかりと持ちながら、その時の公演に来ていただいていた皆様には、少しでも成長した姿をお見せできれば良いなと思います。

 今回は、解説が巳之助さんなので、解説に全て持って行かれないように、『連獅子』の良さがいっぱい出せるように踊りたいと思っています。自分も家庭を持ち、子どももできましたので、「親子の情愛」のようなところに変化があるのかなと思います。そういったところをお見せできるように、今から稽古を積み重ねて、皆さんに楽しく見ていただけるように勤めたいと思います。
 国立劇場という大きな劇場でさせていただくという喜びはすごく感じています。特に『連獅子』は前半は凄く大事な部分だと思いますので、そういったところを基本に忠実にということは心がけていきたいなと思います。前回、父が私のことを心配しながら踊っていたんだなということが凄くわかりましたので、なるべく心配をかけないように勤められれば良いかなと思います。

 ラスベガスで(松本)幸四郎のお兄さんと公演させていただいて、その時も最後に毛振りがあったのですが、みなさん喜んでくださったように感じました。日本はこれから東京オリンピックにかけて、観光客の方も増えていくと思います。そういった時に、伝統文化である歌舞伎に触れていただく機会が増えていけば、凄く良いことだと思います。



【坂東巳之助】
 鑑賞教室は学生さんが多く見に来られる公演ということで、もっと年齢の近い方がおやりになった方が、解説としては学生の方が興味を持って入っていきやすいのではと思いました。ですが、国立劇場への出演自体が6年ぶり、鑑賞教室には7年ぶり、暫く国立劇場には出演していないということで、やらせていただこうと思いました。
 そして私と同い年の歌昇さん、私も大変お世話になっているお父さんの又五郎さんの『連獅子』ということで、学生の皆様に興味を持っていただいて、お二人の『連獅子』を楽しんでいただける解説ができたらなと思っております。
 歌舞伎に興味を持っていただくことももちろんですが、今回の『連獅子』は舞踊の作品ですので、舞踊にも興味を持っていただきたいと思います。私個人にとりましても、坂東流という流儀の家元もしておりますので、日本舞踊に興味を持ってもらえる良い機会でもあると思っています。精一杯、分かりやすく、楽しく、魅力を伝えていけるように解説させていただきます。

 私自身の個性というよりは、きちんと、これから見る作品に繋がっていく解説をするということが大事だと思います。「歌舞伎のみかた」ですから、本当に初めて観る人達というのは、その瞬間が初めての歌舞伎、歌舞伎のすべてであるわけで、その前につく解説としての「歌舞伎のみかた」、『連獅子』の見方を伝えなければ意味がないと思います。そこを大切にして解説をしたいと思います。
 踊りをどうやって見たら良いのかを伝えるのはなかなか難しいと思います。亡くなった父(十代目坂東三津五郎)も、「考えるのではなくて感じるものだ」とよく言っていました。特に若い世代の方々、僕らよりももっと若い世代の人達は、どうしても理解しようとして、物事に向き合うということがあると思います。決してそれは悪いことではないのですが、感じるままに楽しむということも「歌舞伎のみかた」の中で解説できれば、より楽しんでもらえるのかなと思います。

 歌舞伎を観た反応とかは、日本国内においても、東京・大阪・名古屋・九州でも全然違います。国の違いによってもそれぞれだと思います。「お客様の声」を読むだけでもいろいろな感じ方をされているのだなと伝わってきますので、誰もが興味を持ってくれる、入り口になれるような、全方位に向けた解説ってなんだろなという事を考えています。