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公文協「中央コース 松竹大歌舞伎」製作発表が行われました
恒例の公文協主催、巡業公演「 中央コース 松竹大歌舞伎 八代目中村芝翫・四代目中村橋之助・三代目中村福之助襲名披露」(6月30日~7月29日)が上演されます。5月16日(水)に都内にて製作発表が行われ、中村芝翫、中村橋之助、中村福之助、中村梅玉らが公演に先立ち巡業への意気込みを語りました。
【中村芝翫】
一昨年から始まりました襲名興行も、これをもちまして走り切ることができます。この興行を通しまして、多くの皆様にお力添えを賜りましたこと、本当に深く感謝をするとともに、改めて父(七代目中村芝翫)の偉大さを痛感いたしました。そして、梅玉のお兄様が親代わりのようにずっと出演してくださいました。お兄様の穏やかな常日頃の姿勢を拝見して、歌舞伎役者たるものこうなくてはいけないと、身を持って教わった気がいたします。
今回は『文七元結』の長兵衛をやらせていただきます。芝翫を襲名してから『魚屋宗五郎』や『芝浜革財布』をやらせていただき、来月も『巷談宵宮雨』といった世話物を志してやっております。自分の仁に合うかな、身体に合うかなと不安を抱きながら、去年12月の京都の顔見世で長兵衛をやらせていただきました。かつては紀尾井町(二代目尾上松緑)のおじ様、中村屋(十七代目中村勘三郎)のおじ様、勘三郎(十八代目中村勘三郎)の兄が勤めておりまして、私とはほど遠い役かなと思っておりましたが、去年長兵衛を勤めさせていただいて、やはりこの作品の素晴らしさ、人情の暖かさ、人に支えてもらった心の優しさというのを、この作品を通して味わったような気がします。
巡業公演は昨年西コースと東コースを回りまして、今回は中央コースでございます。巡業ではおそらく中央コースに一番出ていまして、いろいろなお役を勉強させていただいた、思い出深い巡業でございます。東北にも行きますが、父が亡くなりました年に起こった東日本大震災、ちょうどその地震が起こった3月11日が父の誕生日でございまして、何か深い関わりがあるなと思います。そういった方々にも、芝居をすることによって勇気を伝えるというのが私どもの使命であると感じております。
倅の方でございますけれども、橋之助、福之助、今回は歌之助は学業がありますので不参加ではございますが、この襲名を通して息子たちの姿を見て、肉体的にも精神的にも少しは大きくなっているなと、親馬鹿ではございますけれども、これも襲名のおかげと感謝しております。
今回、橋之助と福之助が『棒しばり』という大役を勤めさせていただきますこと、また襲名におきまして身に余るお役をさせていただいたこと、本当にこれは皆様方のおかげだと深く感謝をしております。
歌舞伎をご覧になったことのない方は、難しいとか、長いとか、眠くなるとか、何言っているかわからない、ということが多いですけれども、今回の演目はすごく親しみやすい演目だと思います。歌舞伎はライブですので、劇場まで足を運んでいただいて、その空気、空間というものを味わっていただくと病み付きになりますので、これが鑑賞のきっかけになれば良いなと思います。多くのお客様が、各地で劇場に足を運んでくださることを望んでおりますので、皆様どうぞよろしくお願い申し上げます。
【中村橋之助】
一昨年から始まりました襲名も、今回のこの巡業を持ちまして最後の興行となります。一昨年の10月から、身に余る大役、自分の憧れていた大役をたくさん勤めさせていただきました。その締めくくりの興行で『文七元結』の文七と鳶頭、最後に弟と『棒しばり』を勤めさせていただける、こんな嬉しいことはありません。
『文七元結』の文七というお役はずっとやってみたかった憧れのお役です。また、世話物の中で話の軸となるようなお役をさせていただくのも初めてでございます。お芝居の中に溶け込んでいけるように、また弟の福之助とダブルキャストですので両方見てくださったお客様には「橋之助の方が良かったな」と言っていただけるように勤めたいと思います。
『棒しばり』は小さい時から大好きだった演目です。それを初役で弟と二人で勤めさせていただけるということは、こんな心強いことはございません。お客様に楽しんでいただけるように、今からお稽古を始めております。打ち出しの演目ですから、お客様に楽しかった、見に来て良かったと思っていただけるように、良い感想がたくさん出るように勤めたいと思います。
【中村福之助】
今回の巡業では『文七元結』の文七と鳶頭を兄とダブルキャストで、そして『棒しばり』も兄とやらせていただきます。
一年半続いた襲名披露公演では、本当に身に余る大きなお役をたくさんやらせていただきました。自分自身、本当に濃い一年半を過ごせたと思います。変われたかどうかわかりませんが、吸収できるものはたくさんありました。その締めくくりが今回の巡業だと思います。
『文七元結』『棒しばり』は小さい時から親しみのある演目です。『文七元結』は、それをやらせていただけるという実感がまだそこまで湧いていないのですが、今まで見てきたお芝居に出させていただくということはすごく嬉しいことです。本当に楽しみな気持ちでいっぱいです。『棒しばり』は息を合わせて踊らなければいけない演目で、一年半やってきたことの積み重ねで、どれだけ兄と一緒にできるかというところが自分の中で頑張らなければいけないなと思うところです。若手らしく、フレッシュさ、純粋さをお届けできるように頑張りたいと思います。
【中村梅玉】
一年半以上に渡る、この芝翫一家の襲名。私は去年のお正月の大阪松竹座を除いては、すべてご一緒させていただくことができました。先代の(七代目中村)芝翫、神谷町の兄にはお世話になりっぱなしで、何の恩返しもできておりませんでしたので、この襲名興行に出演できたことは先代への恩返しだと思っています。
芝翫さんは既に立派な役者で、芝翫を継いでからますます役者ぶりが大きくなって、これからの歌舞伎界のリーダーとなってくれると思い安心をしております。また、二人の息子達が襲名前はヒヨッ子でしたけれども、この一年半の間に本当に役者ぶりが良くなりました。一人前の役者になってくれたことはすごく嬉しいです。歌舞伎は芸の伝承が一番大事なことで、だからこそずっと400年以上続いているわけですから、こうやって襲名を通して役者ぶりが上がるというのはすごく良いことだなと思います。
今回は中央コースということで、普段なかなか生で歌舞伎を観られない地方の皆様に歌舞伎をお届けします。皆様、この興行を楽しみに待っていらっしゃると思うので、我々も精一杯、全力で皆様の期待にお応えしなければいけないと思っております。