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十八世中村勘三郎七回忌追善興行 記者発表が行われました


 十八世中村勘三郎七回忌を迎えるこの秋、10月歌舞伎座「 芸術祭十月大歌舞伎」、翌11月平成中村座(浅草寺境内)「 十一月大歌舞伎」の二劇場で二ヶ月連続の追善興行が行われます。公演に先立ち7月26日に都内にて製作発表記者会見が開かれ、勘三郎の長男中村勘九郎、次男中村七之助が亡き父への想いと公演への意気込みを語りました。

【安孫子正 松竹株式会社取締役副社長・演劇本部長】
 この秋、(十八世)中村勘三郎さんが亡くなりまして七回忌を迎えます。生前は、本当に素晴らしい活動をされてきて、皆様に惜しまれながら亡くなりました。その後、勘九郎さん、七之助さんご兄弟が互いに手を携えて、お父様の遺志を継いで見事にここまで頑張ってこられました。そのような中で、この度、10月の歌舞伎座と11月の平成中村座で勘三郎さんの七回忌追善興行を二ヶ月連続で行うことになりました。

 上演演目について、10月歌舞伎座の昼の部は、まず『三人吉三~大川端』のお嬢吉三を七之助さんが勤めます。中幕は『大江山酒呑童子』で、酒呑童子を勘九郎さんが勤めます。昼の部の切『佐倉義民伝』では、松本白鸚さんに木内宗吾役でご出演いただき、七之助さんが女房おさん、勘九郎さんが徳川家綱公を勤めます。夜の部は、最初『宮島のだんまり』では、多くの俳優の皆様にご出演いただきたいと思っております。中幕『吉野山』では忠信を勘九郎さん、静御前は坂東玉三郎さんにご出演いただきます。夜の切は『助六曲輪初花桜』です。これは勘三郎さんは『助六』を上演されたことはありませんでしたが、生前に「いつか助六をやりたい」とおっしゃっておりました。今回は片岡仁左衛門さんにご出演いただき助六を演じていただきます。揚巻を七之助さん、白酒売を勘九郎さんが勤めます。この白酒売は勘三郎さんの十八番で大変想い出深いお役です。そして、意休には中村歌六さん、助六の母曽我満江には玉三郎さんにご出演いただきます。

 11月平成中村座の昼の部、まずは『実盛物語』を勘九郎さんで上演いたします。中幕『近江のお兼』は七之助さんが出演します。続く『狐狸狐狸ばなし』は、おきわを七之助さんが演じます。ほか中村扇雀さん、そして中村芝翫さんの重善でご覧いただきます。夜の部は『弥栄芝居賑』を一座総出演で上演します。中幕『舞鶴五條橋』では弁慶を勘九郎さんが勤めます。最後は『仮名手本忠臣蔵~七段目』を上演いたします。芝翫さんの由良之助に、おかるの七之助さん、平右衛門の勘九郎さんという配役になります。


【中村勘九郎】
 この度、父の七回忌追善を10月歌舞伎座、そして11月平成中村座という違う小屋にて二ヶ月連続で行えるということは、祖父(十七世中村勘三郎)が父に言っていた言葉で「追善(興行)ができるような役者になってくれ」とございました通り、皆様のおかげでございます。本当に嬉しさと喜びでいっぱいでございます。けれども、あまりにも早く逝ってしまった父のことを想うと、なぜ追善なのかという悔しさと、悲しみはまだまだございます。その相反する二つの感情が自分達の中にはございますけれども、父のことを好きで愛してくれて、父も大好きだった先輩、後輩、同輩の皆様が出演いただき、力を添えてくださいます。私たちも父のモットーである、来てくださったお客様に喜んでいただける良い興行に二ヶ月ともしたいと思っております。

 父が亡くなって一年ぐらいは、あまり父のことを考えることができませんでした。その後、 8月の納涼歌舞伎、コクーン歌舞伎、平成中村座といった、父が闘って創り上げてきたものを私たちが引き継がさせていただいてやっていると、本当に厳しい状況の中、役一つに集中するだけではなく、興行全体のことや色々なことに目と気を配らなければいけない。その中で、私達の胸の中、心の中、魂の中に残るような芝居をし続けていた父の精神力と芝居を愛する心というものには、改めて尊敬をしております。この10月、11月は私たちの力だけではございません。皆様の力を借りてこのように追善興行ができるということを父も喜んでくれると思うので、一生懸命やるしかないですね。

 当初は平成中村座で二ヶ月ということでしたが、歌舞伎座は歌舞伎俳優にとって聖地ですので、歌舞伎座でも追善興行をさせていただけるということは本当に父が喜ぶと思います。歌舞伎座も聖地です。平成中村座も聖地です。平成中村座は父の夢の小屋です。その夢の小屋で、いろいろなことができるということを証明したのがロングラン公演で、私達も本当にいろいろな経験をいたしました。それからすぐに父は亡くなりましたので、夢が途中でちょっと空いてしまいましたが、私達がその夢を引き継いで、これからも続けていきたいと思います。


【中村七之助】
 10月、11月と二ヶ月連続で父の追善興行をやらせていただくことになりました。これはひとえに皆様のおかげでございます。また関係者の方々にも本当にお礼申し上げます。父も祖父も喜んでくれていると思います。このとても大切な公演、演目と配役を見ただけで震え上がるようなものばかりでございます。父のため、祖父のため、そして父を愛してくださったお客様のために、命懸けで一生懸命に勤めます。

 父は本当に愛されていたのだなということを、七年間、ずっと思い続けておりました。七年経っても褪せることはなく、どんどん大きくなっていくことを感じております。いつも舞台に出る前に父の名前を心の中で唱えて、お願いいたしますといって毎日出ておりますが、まだ父がどこかにいるようで、いないようで、寂しい思いと、父だったらどう思うか、父だったらどうするかということを考えて人生を送っております。この先も父のことを常に考えて生きていくと思います。父が遺してくれたもの、父が愛したものを私も愛して、一生懸命勤めていきたいと思います。

 歌舞伎座と平成中村座は父が違った意味で一番愛した二つの小屋だと思います。工事中の歌舞伎座を見て「これは宝箱だね、ここからいろんなものがどんどんできてくるね」と言った一言、その舞台に立てずに父は亡くなりました。その歌舞伎座で兄と共に、いろいろな方々の力を借りて追善公演ができるということは本当に嬉しく思います。また、父の夢であった平成中村座で続けて追善興行をさせていただけるということは、私も両方ともすばらしいと思い、愛しているので、父も喜んでくれていると思いますし、やらなくてはならないと思っています。