竹本葵太夫さんが重要無形文化財保持者(人間国宝)に認定されます
7月19日(金)、重要無形文化財保持者(人間国宝)に竹本葵太夫さんら7人を認定するよう答申されたことが発表されました。
竹本は歌舞伎という演劇の一部として、俳優それぞれの演出意図を理解し、適切な編曲を施し、気持ちよく舞台を演じていただくための芸能です。芸術家というより職人的なものです。たとえば、『梶原平三誉石切』には、播磨屋、橘屋、成駒屋それぞれに型があり、セリフも演出も違っています。同じ俳優でも日々変わり、そういうものを察知してアレンジします。その上で鑑賞に値する演奏力も必要ですので大変です。
幼少から“チャンバラ”が好きで、歌舞伎に連れてきてもらったときに竹本の熱演に興味を持ち、歌舞伎音楽(竹本)研修生になりました。初舞台から40年、多くの師匠や俳優の方々に教えを請いながら、来年には還暦を迎えます。今回の認定は時節の巡り合わせだと思っています。これからは後進とともに前進し、認定に相応しい実演を、そして“耳うつりの良い”自分の理想とするものを目指していきたいと思います。
(市川)猿翁さんには「なんでも経験しなくてはいけない」と多くの役を付けていただきました。(六代目中村)歌右衛門さんから「ともかく大変な仕事ですから、一段一段階段を上がるように芸を積み重ねてほしい」と声を掛けていただいたこともあります。
以前(第四期)の歌舞伎座のころ、(中村)吉右衛門さんから「熊谷らしく語ってほしい」と。それを自分の中で歌舞伎座再開場までの課題としました。舞台写真をじっと見つめながら・・・そうして思いついたのは「浄瑠璃と俳優の演じる人物像はよく区別しなくてはならない」「俳優にあう義太夫を語らなくてはいけない」とういことでした。その後からはそういうことも言われず、ずっと起用していただいています(笑)。俳優の方から「やりやすい」「あなたでやりたい」と言われるのは何よりも嬉しいことです。
国立劇場の養成事業出身者では初の認定と伺っています。また、今年10月から第24期歌舞伎音楽(竹本)研修生の募集が始まります。今では竹本の演奏家の多くがこの研修生卒です。大勢の方からの応募をお待ちしています。